畑、田などの農地は農業委員会の許可や届け出が効力発生要件となっています。
これらを時効で取得する場合には、原始取得ということで売買などの権利変動と違って農業委員会の許可は不要です。市街化区域内では特に問題になりませんが調整区域ですと許可の様々なハードルを越えられずに仮登記のまま放置されてきた権利があります。
今回もその一つ。住宅地に隣接しているけれども当該地は調整区域で、昭和55年にBさんが建てた住宅もあるのに土地の一部が畑で隣接地Aさんの名義のまま。Bさんの条件付き所有権移転仮登記が残されていました。AさんもBさんも平成が終わるころに亡くなって、その息子さんたちaさんとbさんがなんとか解決したいとご相談に。
固定資産税はいまだにaさんが払っています。家はbさんが使用しています。令和3年の今、bさんが時効を援用した場合、時効の起算点は昭和55年、時効完成は20年後の平成12年。時効の効力は起算点に遡りますので、この場合の登記は「昭和55年〇月〇日時効取得」でBさんではなく直接時効援用したbさんへ、となります。
昭和55年当時の当事者は今は亡きBさんですからとても違和感がありますが、判例上これが正解。原始取得の特殊なところです。今回も法務局の担当者からずいぶん根拠資料の提供を求められましたが無事完了しました。